前年度に続き江戸川開催となった関東地区選。本来なら、舟券作戦を立てるうえでも、同じ冬に行われた前回データを参考にすべきところなのだが、今回ばかりは少し事情が異なる。それは「プロペラ制度の変更」という、とてつもなく大ごとな事情である。

ということで、季節は真逆でも、ここでは昨年6月に行われた当地57周年のデータを洗い出ししてみたい。

“江戸川テッペイ”こと石渡鉄兵(千葉)が、ドリーム戦、準優勝戦、優勝戦を全てインから逃げる完璧な内容で制した当地57周年の、舟券サイドからみた全体的な印象は「スロー勢の圧倒的勝利」である。

1着の決まり手を並べると、逃げ=29回、差し=12回、捲り差し= 5回、捲り= 19回、抜き= 6回、繰り上がり=1回。
数字にすると「逃げ」が猛威を振るった印象だが、「差し」の12回のうち11回までが2コース、「捲り」では19回のうち2コースが5回もあり、さらに同じスローの3コースが9回と、「差し」も「捲り」も圧倒的にスロー勢が決めているのである。これに「逃げ」も加えたスロー勢の節間1着率は、なんと85%に達した。

江戸川と言えば「1から流せば当たる」という常識がもう通じないのはご存じだろう。当地57周年ではイン逃げが29回(40%)も決まったが、これは最終日に9回と固め打ちした結果で、5日目までなら33%と全国平均より遥かに低い数値だった(ちなみに筆者は、最終日のイン逃げ連発の要因は「雨」ではないかとみている)。




2コースの差しや、2・3コースの捲りに屈したイン選手の敗因のほとんどが、スタートの遅れである。それも半数ほどは致命的な遅れ方をしていた。

なぜそんなことになったのかと推理すれば、答えはただ1つ。選手持ちプロペラでなくなったこと、これしかない。

昨年4月まではほとんどの選手が「乗りやすさ」「回りやすさ」を求めてプロペラ作りに励んでいた。オーナープロペラ制となった現在も、選手の理想の舟足は同じである。しかし、たとえば引き当てたモーターとプロペラのセットが「伸び型」に特化していた場合、乗りやすさを求めてプロペラを叩き変える時間はないし、叩いても乗りやすさは来ず、伸びもなくなるというリスクもある。全くダメな場合を除いては、ほとんどの選手が引き当てたモーターの特性のままで走っており、その結果、助走距離の短いインコースでは全速に達せず、スタートが届かないというケースが急増中だ。

季節が変わり、冬場になると、プロペラの回転は上がる傾向にあるが、それでもなお“他人のプロペラ”で走る勝手の悪さからくる「走りづらさ」が、今回も選手たちを大いに悩ますことだろう。とはいえ、左回りしかないボートレースは場所を問わずインが圧倒的有利なわけで、それを無視しない程度に2コースの「差し」と、2・3コースの「捲り」とを振り分けながら高配当を狙ってみたい。




2012年の賞金王決定戦&シリーズ戦は、2013年が「関東復権Year」となる可能性を見せつけた。山崎智也(群馬)が「王者」松井繁を差して賞金王チャンプに輝き、石渡もまた、賞金王シリーズ戦で優勝戦に進出した。

今大会が江戸川開催であることを踏まえれば、優勝候補の筆頭にあげなくてはならないのは、やはり石渡鉄兵だ。
多くの選手がスタートに四苦八苦した当地57周年で、石渡はドリーム戦と準優勝戦で一人「0台スタート」を決め、優勝戦もトップスタートで悠々と逃げ切った。賞金王シリーズ戦でもシビれるようなスタート戦を連日披露したが、それでいて“スタート野郎”という印象を与えないのは、スタートだけの選手でないからだ。江戸川だからではなく、関東ナンバーワンの地位に立つにふさわしい真の強さを、既に手にしている。

山崎は、賞金王決定戦のトライアル段階では伏兵扱いで、むしろ、夫人(横西奏恵)の電撃引退のほうが注目されていた。しかし、日を追って手応えが上昇し、決定戦当日は「優勝」を公然と語り、それを実現した。リズム、当地実績ともに上々の今、石渡を破り、「関東復権Year」のリーダーとなって当然の存在だ。

当地57周年で石渡とともに優出したのが齊藤仁(福岡)。
GI制覇を機に完全にひと皮むけた印象で、その後もGI優出を重ねる充実ぶり。当地GIでも実績がある。

水面実績なら当地周年3優勝の熊谷直樹(北海道)は外せないし、同じく当地でGI優勝のある飯島昌弘(茨城)も攻撃的な走りで1着獲りへ。

一方、記念戦線での活躍から遠ざかる中野次郎(東京)、飯山泰(神奈川)、なかなか復活のきっかけが掴めない高橋勲(神奈川)や村田修次(東京)、福島勇樹(東京)らの奮起にも期待だ。

その他、西田靖(神奈川)、長岡茂一(東京)、三角哲男(千葉)らベテランSG覇者たちも安定した取り口で元気一杯。山田竜一(東京)、作間章(千葉)、田中豪(東京)らもGI獲りへ執念を燃やす。攻撃的な走りでは秋山直之(群馬)や滝沢芳行(埼玉)、中澤和志(宮城)が脅威。山田哲也(千葉)や梶野学志(東京)も既に地区選で活躍できるレベルに達している。


(松長 彰/マンスリーBOAT RACE・デスク)