江戸川では、「 を買っていたら、まず負けない」という話はもう過去のこと。
いまや江戸川は、新しいボートファンには「捲り水面」と認識される勢いだ。

6月にGI江戸川大賞(57周年)が開催されたが、シリーズ6日間を通して「捲り」は19回も決まった。「捲り差し」も5回決まり、「逃げ」29回には及ばなかったが、「差し」12回を大きく上回った。8月には、その57周年にも出場した地元スターたちが再び集結し、お盆シリーズが行われたが、ここでは「捲り」は8回とやや少なかったものの、代わりに「捲り差し」が13回も決まり、相変わらず全速戦が飛び交った。

ただ、今年の57周年、そしてお盆シリーズは、ともに最近の江戸川データと比べるとイン逃げが多く決まった。その要因として、両シリーズとも午後に満潮を迎える「上げ潮」水面だったことが考えられる。しかし、今回のG2・634杯の期間中は、午後2時〜4時に干潮を迎える「下げ潮」水面となる。「好メンバーが揃うとやっぱりインが強い」などと考えていたら痛い目に遭うだろう。




6月の57周年では今回と同じくドリーム戦が2つ組まれたが、ドリーム勢は散々な結果に終わった者が多かった。12名中、予選を突破できたのは7名。そのうち優出した2名が優勝、準優勝と上位を占めたのはさすがだが、江戸川では全国成績やSG戦線での活躍がまるで通用しないことをはっきりと証明した。

そして、この57周年を制したのが、“江戸川テッペイ”こと、石渡鉄兵(千葉)。
再び地元のトップクラスが集結したお盆開催(大江戸賞)でも優勝し、当地水面2連覇中だ。

石渡の魅力は何と言ってもスタートの早さと攻撃力にあるが、驚くべきことに石渡は選手になって以来、これまでFはたった7回しかしていない。濱野谷憲吾(東京)の28回、同期の辻栄蔵の25回と比べても極端に少ない。それでいて平均STでは両者を上回る「早さ」を誇る。これほど頼もしいエースはそういないだろう。

濱野谷も江戸川実績では石渡に負けない。ともにGI2勝の水面実績を持つが、地元の先輩にはGI3勝の熊谷直樹(北海道)がいて、この3名が地元3強を形成。先のお盆シリーズでも揃って優出、濱野谷はカド攻めが不発に終わったが、熊谷は2コースからしぶとく立ち回り、石渡を追撃した。




石渡だけでなく、熊谷もまた、攻撃の生命線はスタート力である。
6月の57周年では、節間でトップスタートの選手が勝ったレースは、全体のおよそ半数の35回だった。江戸川を制するのに必要なのは、「一に水面実績、二にスタート力」、これに尽きる。あとは「三、四がなくて、五に度胸」といったところか。

地元勢では、三角哲男(千葉)、山田竜一(東京)、飯山泰(神奈川)、山田哲也(千葉)、そして石渡門下でエース候補として期待される若林将(千葉)らも、度胸満点のレースを見せてくれそうだ。

遠征勢の江戸川実績では、熊谷と同じGI3勝を誇る湯川浩司(大阪)が断トツだが、通算勝率では地元勢をも抑えてトップに立つ横澤剛治(静岡)が優勝も5回と強烈。

これに続くのが平尾崇典(岡山)、白井英治(山口)、重野哲之(静岡)、中島孝平(福井)あたり。峰竜太(佐賀)は通算で4節しか江戸川を走っていないが、それで優勝1回、前回はGI優出(3着)と好成績を挙げている。


(松長 彰/マンスリーBOAT RACE・デスク)

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